秋の議会ご報告① 市提出2議案は否決に
職員倫理条例(案)は議員全員が反対
こんにちは、上尾市議 尾花あきひとです。
閉会となった9月定例会についてご報告致します。
おおまかなトピックをまとめると・・・
【1】6月議会では採決見送りとなった「職員倫理条例案」は、閉会中審査ののち9月議会で採決へ。結果は・・・全議員が反対して否決
【2】6月に浮上した「小敷谷フェンスブロック擁壁 公金不正支出」疑惑に関し、市は9月議会直前に調査結果をまとめ議会に報告。責任を取るとして「市長・副市長の給与減額案」を提案したが、議会側は「真相はまだ全て明らかになっていない」として否決
【3】百条調査「証人喚問者リスト」が決定。市側が調査報告を出したとしても、議会側は百条委員会にて真相究明を続けていく
・・・市側の目玉議案は2つとも否決という結果に。
詳細をご説明いたします。
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【1】6月議会では採決見送りとなった「職員倫理条例案」は、閉会中審査ののち9月議会で採決へ。結果は・・・全議員が反対して否決
総務委員会 審査の様子(上部:議員席 下部:行政席)
以前の記事で書いたように、6月議会で市が提案した「職員倫理条例(案)」は、各会派から意見・異論が噴出した結果、その定例会で採決まで至らない「継続審査」となりましたが、この委員会(6月13日)での継続決定の直後(6月20日)に「小敷谷地内フェンス・ブロック擁壁 撤去・新設」の公金不正支出疑惑が新たに浮上。
6月議会ご報告① 市案「職員倫理条例」は・・・全会派一致で継続審査へ
6月議会ご報告② 小敷谷ブロック塀公金不正支出の事案
この疑惑に対して、上尾市議会は46年ぶりとなる「百条委員会(※)」を立ち上げて調査を開始。
(※ 「地方自治法第100条」に基づく権限が付与される特殊な委員会。調査の際に強い調査権が発動でき、関係者の出頭や証言・記録の提出を請求できる委員会。正当な理由なく関係者が拒否した時は禁錮・罰則が科せられる等非常に強い権限を持つ)
この状況と平行して私たち総務常任委員会では、付託されている「職員倫理条例(案)」の継続審査のため閉会中に委員会を重ねました。
なお、6月議会ののち総務委員長が空席となったため新たに選出する運びとなり、各委員から賛成頂いた結果、私が委員長となりました。
そこで審査にあたっては、私が考える昨今の上尾市議会の問題点として
・市長議長同時逮捕後から議会内対立が加速した結果、議題の中身の前に「誰の意見か」という点が先行し踏み込んだ議論にならない
・意見が平行線の場合に議論不足のまま主張をぶつけあって 相手の批判ビラをまいて終わりになりがち
といった傾向を解消するため、「会派間の賛成反対」が入り込む前段階で各論を整理し、全ての委員の意向を確認しながら議論の流れを丁寧に作るよう努めました。
今回の審査については、前提として「継続決定判断の後にブロック塀の疑惑が浮上した」ため、継続決定時点とは状況が変化している点が重要です。
【図】条例案と塀工事疑惑の時系列を整理
言い換えれば、6月に市が提案した「職員倫理条例(案)」の問題点(=継続になった理由)に更に加えて「これは小敷谷塀工事のケースにも対処できる条例なのか」がクリアされなくては 市職員倫理条例としては不十分という事で、各委員からの意見が出ていました。
また、時系列で整理すると「6月議会の条例案提出にさかのぼる5月中から 市は小敷谷塀工事に対する内部調査をしていた」ため、疑惑の調査中に倫理条例案を提出した姿勢に対しても疑問の声が。
この点を確認したところ、担当の課長・部長は疑惑自体を「6月20日の一般質問において初めて知った」と答弁しましたが、ならば尚更、一度取り下げて 調査結果を反映した案を提案し直すべきと意見もありました。
(いずれにせよ上程者の市長部局は 調査中と知りながら議案を提出した事になりますが)
繰り返しですが、今回の件は「継続にしたのちに市政運営で新たな疑惑が生じた」というかなり特殊な状況です。
「継続審査」は、議会側で条例案を預かっている状態であるため、中身を変更するには「議会側で修正案を提出する」あるいは「市側で一度提案した議案を撤回し、調査結果を反映して新たに提出する」といった方法をとる必要があります。
内容について特に問題となったのが「不当要求を受けた職員が通報する仕組み」部分でした。
「必ず上司を通す仕組み」として提案されていたため「報告を上司が握りつぶした場合」には機能しない条例となっており、今回の小敷谷塀工事の件はまさにこのケースではないかという意見が委員から発せられています。
この点も指摘ののち、撤回・修正の選択肢があるか確認しましたが、市側は「組織的な対応によって不正を防止する条例というコンセプト。従ってこのフローは変更できない」と、頑なに変更の意向を示さず、そのまま9月定例会に突入していく事になりました。
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9月5日に迎えた総務委員会で、市側は再度コンセプトについて強調し、この条例案について
「上尾市がこれからの市政運営に向けて一歩を踏み出すための1つのシンボルとなるもの」と述べましたが、議会側からはここまでの審査によって浮かんだ問題点を各議員が指摘し、主な意見として
◆コンプライアンス条例制定は必要だが、本案は、西貝塚入札不正での第三者委員会指摘を受け組織的対応をするために作られたものとの説明である。
しかし審議中に、ブロック塀の公金不正支出が明らかになった以上、本案もその変化に対応したものでなければならない。
しかし今回の件では、所属長やその上司の次長や部長までもが事実を認識しながら不当要求を是認したとされ、組織的な対応ではこの問題が防げなかったことは明らか。
本案は今回の教訓を生かせていない。
案では不当要求を受けた場合には所属長に報告するとされている。
所属長が圧力に屈したとされる今回の事件を踏まえれば、不十分どころか、所属外に報告する事になっていたこれまでの内部通報制度より後退している。
報告を行った職員に対する通知についても記述がなく、所属長がもみ消しても本人が知り得ない。
これら問題について、執行部に繰り返し指摘し、委員間で会派を超えて議論し、実効性ある条例ができるよう提案したが、市としては組織的な対応が不可欠という一点を持って、改善することはできないという答えだった。
外部組織である審査会に報告するルールについても問題点を指摘したが明確な答えがなく、さらに議会は百条による調査中であり、その結果を踏まえなければ、真に問題に対応できる条例とならない
◆案そのものが西貝塚環境センターの第三者調査委員会の提言に沿って提案されている。
新たに明らかになった小敷谷の問題で、市の組織的対応が困難だった事が指摘されている。
不当な圧力を受けた職員は、上司に相談することが適当でない場合は審査会に通報できるとの案だが、枠組みを固定せず通報できる仕組みが必要
と反対の立場の討論のみがあり、採決の結果、全会派・全議員が反対し この議案は否決となりました。
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全ての議員が反対する議案は極めてまれです。
職員側の再出発の議案だけに、このような結果は自治体として非常に残念ですが、中立的な論点整理と運営を徹底した結果、今回は会派間対立が入り込まなかったため、議会が議案そのものに是々非々で向かった結果であると思っています。
なぜ市側が条例案を作り直す選択を頑なに拒否したか疑問ですが、議会が追認機関化する危険は常に避けなければいけません。
執行部とも丁寧に議論を重ねたため、議案否決という結果もふまえて深く考えてもらう機会にして頂ければと思います。
詳細については最終日の委員長報告にて説明しております。(下記動画)
【動画】(職員倫理条例案の審査報告は リンク先「3 委員長報告」 0:27:21〜)
(【2】以降の報告は別記事につづきます)
プロフィール
上尾市議会議員/38歳
1983年 上尾市生まれ。明治大学政治経済学部卒。
ドラマ・映画演出部、地元で企業活動を経て上尾市議会議員。
行政改革・市民協働・地方分権を基本に、地域の潜在力発揮に向けて活動中。